これは2013年に出版されている。公開講座を収録したもので、話もとても面白い。 村山斉氏の本をもう少し詳しくした感じである。1章:ブラックホール、2章:ビッグバン、3章:暗黒物質、4章:そして宇宙は創られた、からなる。 1章は、いきなり物質と反物質の話から始まる。反物質が医療現場で使われているというのだ。炭素11という放射性同位体は20分位でほう素に変わるが、その時に反物質である陽電子を放出するという。炭素11のような放射性同位元素をがん細胞に集まり易い薬剤に混ぜて体に吸収させると、がん細胞の周りで放出された陽電子が細胞の電子と反応してエネルギー(ガンマ線)を出すので、体のどこにがん細胞があるかを特定できるという。PETと呼ばれる装置がそれである。 ブラックホールが高密度・高質量からなるものであるということは知っている。例えば、地球も半径8.9ミリまで圧縮すればブラックホールになるというわけだ。しかし、物質をそんなに圧縮することは可能なのだろうか?それが理論的には可能なのだという。何故なら、原子核は原子の大きさのほぼ百万分の一だから、とりあえず陽子と電子がくっつく状態(これは中性子という)まで圧縮するとおよそ百万分の一の大きさまで圧縮でき、さらに中性子もクォークが泳いでいる状態なので、そこからさらに圧縮が可能で、そうなると強い重力により光さえ外に出られないブラックホールが誕生するのである。ブラックホールはすでに沢山観測されていて、これまで観測されたなかではOJ287というものが最大で、その質量は太陽の180億倍もあるというから驚きだ。どうしてこのようなブラックホールが生まれたのかは、まだよく判っていない。 暗黒物質、ダークマターというものが存在していると考えられたきっかけは、観測された銀河の観測事実から質量計算をしてみると、計算結果は予測されたものよりはるかにちいさなものだった。また、宇宙の多くの銀河がなぜか凸レンズのように曲がっている。これは重力レンズ効果ではないのか、というわけで、宇宙には目に見えない物質が存在すると考えられるようになったらしい。今のところそれがなにかは判っていない。候補としては、冷たく重いWINPと冷たくて軽いアクシオンの二つがあけられているが、まだ確認されていない。 また、現在の宇宙を満たしている総質量を計算から導くと陽子からなるいわゆる物質が4パーセント、冷たい暗黒物質が23パーセント、残りの73パーセントは、まだ判っていない。とりあえず、暗黒エネルギーだというが、まだまだ宇宙には謎が多い。 宇宙の創造については、ビッグバン→強い力→インフレーション→弱い力と電磁力→クォークが陽子に閉じ込められる→粒子だけが残る(ここまででビッグバンの10秒後)→元素の合成(ビッグバンから10秒後)→電子が原子に閉じ込められる=宇宙の晴れあがり(38万年後=10の13乗秒)→現在(10の17乗秒)とかなり詳しく、また分かりやすく説明されている。
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