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アルベール・カミュ『異邦人』(河出文庫)
作品についてあらすじ  

作品について
 冒頭の「きょう、ママンが死んだ」の書き出しから、読む者はいきなりカミュの世界に引き入れられる。
 小説は、二部構成で、第一部は主人公の母親の葬式をめぐる話から始まる。そしてガールフレンドとの生活、さらに友人との交友からラビア系の男たちとのトラブルに巻き込まれ、あげく主人公がアラビア人の男をピストルで射殺してしまうところまでが語られる。
 第二部は、主人公が逮捕され、拘置所に入れられ裁判にかけられる。その裁判のこまごまとした成り行きと最終的に死刑判決が出され、処刑を待つ身となるところまでである。

 あらためて読み返してみて、やはり見事な小説だと思った。これを書いたあとカミュはサルトルとならんでもてはやされたが、彼はサルトルとは明らかに違う。むしろニーチェに近いのではないかと思う。彼は不条理を説く。理性から捉えた時にとうてい納得し難い現実に遭遇することがあるが、そうした運命や現実をカミュは不条理と呼んだ。この小説の舞台は彼の出身地であるフランスの植民地アルジェリアであるが、この小説は第二次世界大戦中に書かれたものだ。従って、アルジェリアの独立まではまだしばらく時間があるが、フランス人とアルジェリア人という植民地的対立が登場人物たちにも影を落としている。植民地支配による不条理はやがて独立戦争となって清算されるが、そこへいたるまでの過渡期の一種虚無的な空気感が作品全体に漂っている。
 カミュは不条理に対して「反抗」を説くが、それはあらゆる権威や主義をも否定する。従って彼は当時の流行思想であった実存主義や共産主義にも異を唱え、サルトルとも決別した。

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