終章 未来の目は見た
最後に未来の目に伝えておきたいことがある。 雫石事故の翌々日に『パイロット衝撃の証言仮想敵で追跡された″ 162人は告発する』(一九七一年八月一日付読売新聞)という記事があった。この162人というのは雫石事故で亡くなった乗客乗員の人数である。 各航空会社の現役機長が語る事実として、フライト中、かなりの頻度で自衛隊機に仮想敵にされて追跡された経験を持つという衝撃の証言であった。また同紙面には、『過去にも民間機を仮想敵に見なす。といった内容が書かれた訓練用の教令のような紙が、自衛隊の演習場近くの農場で発見されたこともある』という記事もあった。これらについて、当時の空幕副監査官・稲葉由郎二佐は『そんなことは絶対ありません。私どもは相互に直接連絡のとれない相手を目標にすることを厳重に禁止しています』と同記事内で述べている。 この時代は日本万国博覧会(一九七〇年)の翌年で、民間航空機も増加し、米軍や自衛隊との飛行空域の過密が指摘されていた。しかし、仮想敵にされていると感じるようなニアミスも多発しているという機長たちからの証言から考えるとこれは一体どういうことなのだろうか。 墜落した123便の高浜機長もそうだったが、民間航空機のパイロットは自衛隊出身者も多い。自衛隊から民間航空会社に転職する際、精神的な面として常に心がけなければならないことがあるという。それは、お客様を第一に考えてフライトをする、という当たり前の意識である。これはもうお亡くなりになったが、元日本航空機長の信太正道氏から聞いた言葉である。 一九二六年生まれの信太氏は、海軍兵学校、特攻隊貞、海上保安庁、海上警備隊、航空自衛隊を経て日本航空の機長になった経歴を持ち、123便の事故時は香港にフライトで滞在中だったとのことだ。その知らせを聞いて驚いて一晩中クルーたちと語り合いながら過ごしたそうである。その翌年に定年退職をされた。そして二〇一五年に亡くなる直前まで「厭戦庶民の会」の代表として平和活動を行っていた。現場を知り尽くした人だからこそ自衛隊の海外派遣に反対し、語る言葉は重い。 信太氏は、民間航空機のパイロットに必要とされる要件は『@人命優先、A原点に引き返す勇気を持つこと、H目的地の着陸に失敗し、代替空港に目的地を変更する場合、最終目的地における飛行状態がイメージできること、C計器に引きずられないこと』と、著書『最後の特攻隊・二度目の「遺書」(一九九八年・高文研)に書かれている。特に自衛隊出身者は、人命優先という当たり前のことをよほど意識しないと難しく、武器を持つ場合はこういう意識が必要ないから、ここに大きな違いがあると語っていた。 信太氏によれば、民間航空機のパイロットはその職業を好きで選んだ人が多く、自衛隊の場合、好きというよりは生活の糧として選ぶ人が多いのも事実である。そうなると飛行機は武器の一つであり、ミサイルを搭載して運ぶ物体という認識が先に立つそうだ。従って、飛行機を愛機と呼ぶほどではなく、機械として扱ってしまうことで大切にしない人も多いと語っていた。 つまり、相手を殺す手段として航空機を操縦する気持ちと、国と国を結ぶ役割を持って自由に飛び回る民間航空機のパイロットでは、その意識に大きな差がある、ということだろう。 そのような中で自衛隊に「民間航空機を仮想敵とする」といった考え方が出てきても不思議でないかもしれない。もし、これが本当であれば、自衛隊は誰を守るために存在し、何のための訓練かを深く考え直さなければならない。相手を武器で攻撃して敵に打ち勝つためには何が必要かを常に優先して考えてしまう。平時の訓練でいくら守るべきものは自国民だ、と思ったとしても、臨場感や緊張感を持つためや、訓練の効率性を上げるために民間航空機を仮想敵に見立ててしまう、ということの可能性がゼロとは言えまい。事実、そう思わざるを得ない経験をした民間航空機の機長も多い。 さらに、何か失敗した場合、自分たちの都合の悪い情報は隠したいという心理も働き、その情報が開示されることの影響が多大であることへの恐怖心も強いだろう。特に雫石事故では、防衛庁長官、内閣防衛事務次官、自衛隊統合幕僚長、航空幕僚長らの首が飛び、関係する幹部の処分は広範囲にわたった。事故の約三週間前まで防衛庁長官であった中曽根民らが、雫石事故から学んだことは大きかったはずである。まさか隠蔽の仕方を学んだわけではあるまい。 そして多くの疑問が残る日航123便墜落事故について、私たちが忘れてはならないことは次のことである。
- あの日、まだ日の明るいうち、墜落前の日航123便を追尾するファントム二機を目撃した人たちがいる事実。
- 日航123便のお腹付近に濃い赤色のだ円や円筒形のような物体が吸着しているように見えた事実。
- 墜落現場付近の人に目撃された真っ赤な飛行機の存在。
- 検死した医師たちが見た、凄惨な遺体状況や炭化した遺体への疑問。
- さらにいまだに引き揚げようとしない海底に沈んだままの機体の残骸。
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